人は人の話を聴いているときは、意識は話し手に向けられています。
でもいったん話し手から聴き手に質問が向けられると、その意識は聴き手自身に向けられます。
その問いかけられた質問によって思考が始まります。
そして頻繁に向けられる質問によって思考の習慣も形成されます。
リーダーにとって大切なのは、メンバーにどんな思考習慣を持って欲しいのか?
そのためにはどんな問を投げる必要があるかを意識することです。
このところ連続してAI(Appreciative Inquiry)ワークショップを実施する機会があり、
質問の大切さを再認識しました。
AIは組織、チーム、個人における強みや価値といったポジティブな側面にフォーカスを当てた質問によって
その内容を探求していきます。
このプロセスを体験した参加者たちは、
ポジティブな問いかけをすることの価値やパワーに気づき、日頃の会話の中にも取り込み始めます。
つい私たちはうまくいっていないところにフォーカスを当てた質問を多くしてしまう傾向があります。
・なぜこの商品はうれないの?
・どうしてこんなに離職率が高いの?
・なぜ顧客満足が低いの?
このような質問を投げられてしまうと、つい体裁のよい言い訳を考え、
その場逃れの対応が増えてしまう傾向はないでしょうか?
これらの問を少し変えて
・どうすればこの商品はもっと売れるだろうか?
・なぜあの部署はあんなに定着率が高いのだろうか?
・なぜあの営業所はそんなに顧客満足が高いのだろうか?
うまくいってるところにはそれ相当の理由があります。
この要因を見つけ出し、自分たちのチームに取り入れることは大きな前向きのエネルギーを生み出します。
ここで大切なポイントは思考の方向性です。
「どうしてこの商品は売れないの?」って問いかけると、売れない理由をメンバーが考えるようになります。
ここで本当に求めているのは、売れない理由について思考してもらうことでしょうか?
これに対して「どうすればこの商品はもっと売れるだろうか?」の問は、
お客様に喜んでいただくためのアイディアに関する思考や会話を引き起こします。
もちろんそのプロセスにおいて、販売実績や売れない原因についても思考するでしょう。
そのうえでどうすればもっとご購入いただけるかのアイディアにつながっていきますよね。
またよく聞かれるディスカッションテーマにコスト削減があります。
これも同様で、コスト削減と聞いただけで全ての経費を抑えようとする思考のスイッチが押されてしまう傾向はないでしょうか?
このテーマをたとえば利益率の改善または向上に変えた瞬間に、
いかに効果的に経費を使うかという思考に切りかわるのではないでしょうか?
ディスカッションのテーマを決める際も
是非前向きで、創造的なエネルギーが高まるテーマを意識してみてはどうでしょうか?
”言葉が世界を創る”とよく言われますが、
リーダーとして是非メンバーに思考してもらいたい問を投げてみてください。
私たちの未来は、投げかける質問によって方向づけられます。