ある精密機器の製造販売会社でマネジメントスキルアップの研修を実施していたときのことです。
受講生の一人からこんな質問が投げかけられました。
「若手の考え方についていけず苦労しています。何かいい方法はないですか?」
「具体的にはどんなことがあったか教えていただけますか?」と質問したところ
「仕事が終わっていないのに、プライベートの約束があるからと言って帰ってしまったり、
報告を怠ったり、仕事を手伝ってもらったのにありがとうの言葉がいえなかったり、それはもうひどいものです。
私にはまったく理解できません。」との返答がありました。
そこで私が他の受講生に「皆さん、何かご意見ありますか?」と尋ねると
現在中国に海外駐在中で、他の国にも駐在経験のあるスタッフから、
私自身もなるほどと納得してしまう素晴らしい意見が述べられました。
「海外で仕事をしているとそんなの日常茶飯事です。
仕事中に急にいなくなったり、自分の過ちを決して認めない、謝罪しない習慣があったり、
時間に遅れてきても悪びれたところも全くなく会議に途中参加して意見を言い出したり等々、サプライズの連続です。
でもこの現実を否定していると仕事にならないんです。
現地のスタッフを戦力化していくために私は学んだことがあります。
それは否定の目で彼らを見るのではなく、好奇心の目で彼らと向き合うことの重要性です。
『なぜ彼らはそんな風に物事を見るのか、どうしてそんな風に考えるのか』
彼らの生活習慣や歴史を勉強したり、イベントに参加して一緒に活動したりするなかで
多くの気づきや学びがありました。
同時に彼らの中に飛び込むことで彼らも日本に興味、関心をもってくれます。
その結果相互理解が深まります。
また互いの違いを認め合い尊重するようにもなります。
この壁を乗り越えると互いに協力して、いい仕事ができるようになります。
日本人同士とは言え、世代ギャップがあると異文化に似たようなことが起きるんじゃないですか?
違う意見や価値観の相違にぶつかった時は否定の目ではなく好奇心の目で向き合うことをお薦めします。」
彼の発言の後、他の受講生から自然に拍手がおきました。
質問したご本人も、また私自身もこの受講生からいい学びを得ることができました。
相互に学び合う素敵な場となりました。