大手の電機メーカーでリーダーシップ研修をやっていた時のことです。
「部長として、部員がもっと楽しく働きやすい環境をつくるには部内の風通しをよくすることも大切だが、
関連部門との壁を取り払うことが重要だ」という話になりました。
組織が大きくなるといつのまにかできてしまう、部門間の壁。
皆さん、何か具体的な壁を乗り越えた経験はありますか?とたずねたところ、下記のような事例が紹介されました。
話してくれたのは営業部長のAさん。
実は2年前にある部員から、
「仕事がやりづらくてしょうがない。部長、なんとかしてくださいよ!」と言われたのがきっかけでした。
よく話を聞いてみると、3部門の連携が悪い。3部門とは営業、その営業業務をサポートする営業サポート部、
そして商品納品後のアフターケアーをするサービス部の3部門のこと。
サービス部門が知る情報を営業が知らない。また営業がお客様から聞いた話をサポートは知らない、
といった食い違いからお客様からクレームをいただくことが多発していたとのこと。
そこでA部長は他の2部門の部長にこの状況を説明し、次のようなアクションを取ったそうです。
(1)まずは部長同志、課長同士がランチミーティングで親交を深める。
仕事の話、プライベートな話、とにかく互いをよく知ることを目的に開催。すると...
上長同志の関係が密になると、それにならって課員同志の連係もよくなり、
頻繁にコミュニケーションをとるようになったそうです。
(2)部署のレイアウト変更
頻繁にコミュニケーションが取れるようになるとより効率アップを求めるようになり、
3つの部門が同じフロアーに同居することになったそうです。
これによってちょっとした相談も直に顔をみながら行われるようになり、さらに関係が密になったとのこと。
(3)4半期ごとに合同会議を開催。
それぞれの部署に対する期待と問題意識を自由にポストイットを使って出し合う会議を開催。
でてきた課題を分類し、優先順位を決め3部門からメンバーを出し合ってチームで解決する仕組みを作ったそうです。
この活動を通して、部門間に存在していた様々な問題が明らかになり、また解決に向けて協働する動きが生まれたそうです。
MITのダニエル・キム教授が、好業績を生み出している組織にみられる特徴として提唱している
”成功循環モデル(関係の質→思考の質→行動の質→結果の質)”といわれるものがあります。
このモデルが言っていることは、
好業績を生み出している組織は、関係の質が高い。
関係の質の高い組織に共通して言えることは、活発なコミュニケーションが存在する。
つまり言いたいことが安心して言える環境、話が聴いてもらえる環境が存在する。
そこで多くの事実、データ、意見、感情が交換され、多くの気づきや学びが生まれる。
その結果、ひとの考え方に影響が生じ思考の質が高まる。
その思考によって多くの質の高いアクションが実行されるようになり、最後に結果として実を結ぶ。
まさに上記の例は、その関係の質の向上に着目し、部門の壁を取り払った例といえるでしょう。
皆さんも、関係の質を向上するために何ができるか、ちょっと考えてトライしてみてはいかがでしょうか。